今回はD365BCの既存環境のバージョンを次のメジャーバージョンのプレビュー環境にアップグレードする方法を紹介します。
この機能は利用可能になったのが9月ですが、リリースとしては2025 Release Wave 1の機能になります。
Update sandbox environments to preview versions | Microsoft Learn
手順も機能シンプルな機能ですが、「既存環境をプレビューバージョンの環境にアップグレードできる」ということの影響は大きく、非常に有用な機能です。それはつまり、本番環境の本番データを(環境ごとSandboxにコピーする準備作業は要るものの)Previewバージョンで検証することができる、ということを意味します。従来はPreviewバージョンの環境は新規作成するしかなく、実機検証しようとした場合Cronusのデータを使うか、自分が使いたいデータセットを自分で投入する必要があり、非常に手間でした。その手間がなくなるということで控えめに言って神アップデートです。
といことで手順と挙動を簡単に紹介します。(本当に簡単です。)
まずはBC Admincenterから対象の環境の詳細を確認します。現在のバージョンはv26.4であり、v27のPreviewバージョンにアップグレード可能であることがわかります。

データが保持されたままアップグレードされるか、念のため確認しましょう。得意先マスタに適当に1件追加しておきます。

BC Admin Centerの環境の詳細画面に戻り、この環境が次にアップデートされる予定のバージョンと日付を確認します。この例ではv26.5に2025/10/8にアップデートされる予定となっています。Next Update の横の”Modify”をクリックします。

するとアップグレードするバージョンを指定する画面が表示されます。

プルダウンでv27のPreviewバージョンを選びます。

次に日付を設定します。即時アップグレードしたい場合は今日の日付を設定し、”Allow the update to run outside the update window”のスイッチをOnにします。通常はこの手のアップデートは左側に表示されているUpdate Windowの時間帯に実行されます。業務時間外に実行する必要があるので通常は夜間の時間帯を設定している場合がほとんどです。このスイッチをOnにするとこの時間帯以外も実施することができ、今日の日付を組み合わせることで実質「即時実行」になります。
ターゲットバージョン、日付を指定したら”Schedule update”をクリック。

前の画面に戻り、ターゲットバージョンと日付が正しく設定されていることを確認します。

環境の一覧画面に戻ると、対象の環境のアップグレードが始まっていることが確認できます。

ちなみにアップグレード処理が走っている状態で環境に接続しようとすると以下のようなエラーになりました。ですので、この処理は使っている人たちが困らない時間帯に実施する必要があります。(この環境は自分専用の実験環境なので日中に即時実行していますが、会社の環境だとたとえSandboxであってもいきなりアップデートするのではなくて事前に調整するほうがよいでしょう。)

データの量にもよりますが、しばらく待つと環境のアップデートが完了します。

最初に登録していた得意先もしっかりと引き継がれています。

繰り返しになりますが、控えめに言って神アップデートだと思います。
顧客向けの実際のビジネスの場面で想像すると、メジャーアップデートの既存保証テストをどのタイミングでやるか?という話になります。従来はGAバージョンが10月頭や4月頭にリリースされて、そこから1週間程度で既存環境のアップグレードが可能になり、10月中旬や4月中旬にようやく既存環境(のコピー環境)で既存データを使ってバージョンアップの既存保証テストが開始可能になっていました。それを1か月程度早めることができるという可能性が出てきた、ということです。当然PreviewバージョンはGAバージョンと違って不安定だったり不具合が多かったりするので、結局のところ厳密にはGAバージョンで既存環境のアップグレードが可能になってから正式にバージョンアップの既存保障テストが可能になるわけです。ただし、大きな問題点の有無についてはプレビューバージョンで先に確認して問題をつぶしておく、という選択肢も取れます。
バージョンアップの既存保証テスト以外の観点では、使ってみたい新機能を既存データで検証できるタイミングが1か月早められるので、業務プロセス・システム利用方法の改善がはかどります。
ということで使わない手はない、と言ってもよい機能だと思います。BCを利用されている各社にはぜひ一度試してほしい機能です。