Microsoft Dynamics 365 for Finance and Operation, Business edition の製品ページを解説する


Dynamics NAV のクラウド版に相当する Microsoft Dynamics 365 Finance and Operation, Business edition 20178月現時点でUS, Canadaなど海外一部地域のみで展開されています。従って、製品紹介ページをはじめとする各種情報は現状は英語です。いずれは日本に上陸するでしょうし、その際には日本語での情報公開もされることと思いますが、一足先にGoogle翻訳先生の力をお借りしつつ製品紹介ページを元にMicrosoft Dynamics Finance and Operation, Business editionについて解説していきます。

MS公式のMicrosoft Dynamics Finamce and Operation, Business edition製品紹介ページはこちらです。

https://www.microsoft.com/en-us/dynamics365/financials#

URLの最後が’Financials’になっています。元々’Microsoft Dynamics 365 for Financials’という名前でしたが、途中で名前が’Microsoft Dynamics 365 for Finance and Operation, Business edition’に変わったためです。結構いろいろな所にこの名残があり、各種公式ドキュメントの記述も’Financials’になっているものが多く、読み解くときは注意が必要です。

Google Chromeのページ翻訳機能を使用して日本語変換すると以下のように表示されます。(日本語訳についてはMicorosoftは責任を負わないと思うのでご注意ください。余談ですが、こういう場合の著作権ってどうなるんだろう。。)Cloudが「雲」に変換されたりして、ちょいちょい二度見してしまいますが、、最近の自動翻訳は優秀です。

現実には各種マスタ登録やパラメータの設定が必要なので、「1日目から」業務で使えるというのは言い過ぎですが、標準的なERPのプロセス、例えば「受注、出荷、売上請求」、「発注、入荷、仕入請求」などの業務プロセスを進めるための機能は標準で実装されているので、システムのセットアップから業務利用開始までは短い期間で済みます。

想定している企業のサイズはsmall & midium-sized つまり中小、中堅企業です。数百人くらいまでを想定しているようです。このくらいのサイズの会社では会計システムや販売管理システム(場合によってはシステムではなくてExcel管理)が繋がっていないというのは一般的です。会社が大きくなるにしたがって例えば売上情報を会計システムに入力するためのデータ加工が面倒なのでシステム刷新を検討してERPを導入する、、というのは良くある話だと思います。そういう意味では「中小企業で会社が小さいうちからERPを導入できます、しかも初期投資を抑えたクラウドサービスで」というのは画期的な仕組みだと思います。

ページを下にスクロールします。以下、オリジナルの英語画面と自動翻訳後の画面をペアで載せて解説します。

  1. Connect your business(ビジネスを繋ぐ)

上記の繰り返しになりますが、販売・会計etcの各種機能が一つにまとまったERPシステムなのでデータの加工連携の手間を取らせません、ということです。

  1. Meke better decisions(より良い意思決定)

ERPは実績を記録するという「過去の視点」と、見込データや実績に基づく傾向予測などから次のアクションを考えるという「未来の視点」があります。ここでは後者の視点について言及しています。ERPは「Enterprise Resource Planning」なので名前的には本来は「未来の視点」を期待された仕組みのはずです。しかし、実際には前者の側面だったり、1点目(単一アプリ)の側面だったり、「ERP」=「EPRパッケージ」=「コーディングが少なくて短期にシステム導入できる」といった価値が評価されてきた向きがあります。ただ、今回はCortana,MachineLearningといったこれまでにない「Intelligence」を活用することができるので、お題目に留まらないという期待が持てます。

  1. Start and grow easily(開始と成長が容易)

一覧データをボタン一発でExcelダウンロードできるなどOfficeとの親和性は非常に高いです。クラウドサービスですので、オンプレ(Dynamics NAV)と違ってサーバー構築、アプリケーションインストール、各種サービス定義、等々は不要で簡単に始められます。「必要に応じてビジネスを実行することなく(without getting in the way of running your business.)」のくだりは意味を捉えかねますが、例えばCRM連携したい場合はCRMのサブスクリプションの申込をすればいいですし、支払送金業務を効率化したければExtension(アドオン機能みたいなもの)を追加購入するだけで容易に拡張できます。

ページを下にスクロールします。

このページ(上の図)は事例紹介なので割愛。

ページを下にスクロールします。財務管理機能の説明です。

実績系データ(売上や原価など)はリアルタイムで一つのシステムの中に記録されるので、事業の業績はリアルタイムで把握可能ですし、(システムがバラバラの状態に比べると)会計の締め処理も早くすることができます。(「資金の効率化」は自動翻訳が不十分で「Streamline your financial close」なので「決算処理の効率化」と訳すのが適切でしょう。)

また、会計士がクライアント企業のDynamics 365 for Financialデータにアクセスするための仕組みも用意されているようです。単純に「自社のD365ユーザアカウントに会計士用のアカウントを追加する」ではなく、会計士のアカウントを自社のD365にアクセセスできるように招待する、という方法です。これにより、会計士は一つのアカウントで複数のクライアント企業のD365データにアクセスできるはずです。

  • 売掛計上と口座入金、売掛消込は簡単にできます。銀行口座勘定と売掛勘定は補助元帳を持つ事ができます。例えば売掛が入金された場合、「銀行口座(〇〇銀行△△支店)/売掛金(得意先A)」という仕訳を転記することができ、かつ売掛金については請求時の「売掛金(得意先A)/売上」の売掛金と関連付けることができます。いわゆる「消込」です。
  • 早期支払いの割引などの提案をしてくれる、、と書いてありますが、日本で実際に使う機会は少ないように思います。
  • 「エントリにタグ」とさらっと書いていますが、結構重要な機能です。経営層が今後の事業展開を行う上で事業部ごとの損益、あるいは顧客セグメントごとの損益を見たい、といったことは普通にあるかと思います。Dynamic 365 for Financialではこうした分析レポートを財務会計データから簡単に出せます。これは会計仕訳に「事業部は○○」、「顧客セグメントは△△」などの分析軸と分類値を「タグ」としてつけることができるからです。「タグ」は各種マスタに予め登録しておくことで会計仕訳を作成する都度手入力する必要はありません。例えば「営業担当Aさんは○○事業部」、「得意先Xは顧客セグメント△△」としておけば、受注→請求→売上の会計仕訳、という具合にタグが引き継がれ、会計仕訳に「〇〇事業部」「△△セグメント」と記録されます。

ページを下にスクロールします。在庫管理機能の説明です。

「在庫の圧縮」と「欠品による販売機会ロス防止」の向上の両立はトレードオフの関係性が強く、2つの両立は昔からあるテーマです。Dynamics 356 for FinancialsではAI的な機能(この場合、具体的には機械学習とCortanaによる予測機能)を用いることで両者の両立を図ります。

  • 在庫は場所別管理ができます。もちろん場所によらない全数の確認もできます。(’regardless of its location とわざわざ記述する意図は今一つ不明です。。)
  • 返品が発生した場合、クレジットメモを登録することで売上戻しと返金につなげられます。
  • 引き合いを受けた商品が欠品している場合、事前に品目マスタで代替品目を登録しておけば代替品目を引き当てて出荷することができ、受注機会の損失を防げます。

ページを下にスクロールします。販売管理機能の説明です。

販売と会計が一つのシステムに入っており、情報をたどれるので見積・受注から売掛回収までをスムーズに行えます。得意先ごとに複数の出荷先や請求先住所(請求書送付先)を持つことができ、また仕入先から得意先への直送もできます。

  • Outlook連携機能備わっており、Outlookから出荷を転記してそのまま請求書PDFを送付ということもできます。(「販売権をポスト」は「受注を直ちに売上転記する」が適切な訳です。)また、拡張機能のインストールによりPaypalでの支払いを得意先に提案することもできます。
  • NAV同様、Dynamics 365 for Financialsには簡易的なCRM機能があり、得意先とのやりとりを記録しておくことができます。ただし、あくまで簡易的な機能でしかなく、本格的なCRMが欲しい場合はDynamics 365 for Sales との連携が必要です。
  • 得意先別の価格表を持つことができます。受注量の多い上得意先には値引き率を高くする、期間限定でキャンペーン価格を設定する、といったことができます。
  • 2点目と関連して、販売における営業の諸活動をOpportunity(機会)という形で表現し、優先順位などを付けて管理することができます。

ページを下にスクロールします。購買管理機能の説明です。

承認ワークフローについては購買に限らず、マスタ登録や伝票承認の機能を備えています。

  • 発注登録、仕入請求登録、買掛計上といったプロセスは標準で実装されています。
  • n段階ワークフローを組むことができ、承認者に対して承認金額上限を設定できます。
  • 仕入先ごとの支払い方法や値引き等はマスタに登録しておくことで処理の一部を自動化できます。

ページを下にスクロールします。分析レポートの説明です。

レポート機能も充実しています。販売、購買、在庫管理、会計などが一つのシステムに統合されたERPなので、リアルタイムにデータを取り出して分析して意思決定につなげられます。在庫情報を会計に連携するための夜間バッチを待つ必要はありません。

  • 各種一覧はボタン一発でExcelにダウンロードできるなど、Excelとの親和性は非常に高いです。ダウンロードしたExcelはテーブル形式になっており、Pivotテーブルなどを簡単に組んで分析等ができます。
  • 総勘定元帳(G/L)に前述の「分析用のタグ」を付けておくことで各種分析が可能です。また、分析用のレポートビュー(例えば営業利益が見られるようなレポートや、残高試算表などのレポート)をあらかじめ定義しておいてレポートを呼び出すことで簡単に分析できます。
  • 上記2点はDynamics 365 for Financials 標準の機能ですが、さらにPowerBIと連携することでPowerBI用のダッシュボードにKPIなどの分析指標やレポートをグラフィカルに表示できます。
  • 機械学習(Azure Machine Learning)とCortanaの組み合わせでキャッシュフローの予測なども可能になります。

ページを下にスクロールします。プロジェクト管理機能の説明です。

プロジェクト管理の機能も標準で持っています。WBSを記述してWBS要素ごとの予算と実績を管理できます。実績にはここに記述されている機械や人の工数消費だけでなく、在庫消費、経費なども計上できます。ちなみに、タスクスケジュール管理の機能はほぼ存在せず、原価管理が中心です。仕掛計算機能も備えています。

  • NAV同様、Dynamics 365 for Financialsではプロジェクトの事を「JOB」と呼びます。従って、「Job Costing」は「雇用コスト」ではなく、プロジェクトの原価管理を意味しています。
  • 人の工数は「リソース」として管理できます。また個々のリソースに対して標準の販売単価と原価単価を設定できます。工数精算での請求の場合に使えます。
  • 予算管理機能により予算超過を防げます。

ページを下にスクロールします。

製造機能や倉庫管理などの機能はいずれ実装される予定ですが、現在は未実装です。

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Dynamics 365 for Financialsを使用している企業をクライアントとする会計士向けにポータル機能が用意されており、会計士は複数のクライアントに一つのアカウントでアクセスできるようです。

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これまでに挙げた標準機能に加えて、拡張機能を追加購入したり、自身で(あるいはベンダーに依頼して)アプリケーションをカスタマイズすることもできます。

ページを下にスクロールします。フリートライアルの紹介です。

フリートライアルはについてはこちらの記事「Dynamics365 for Financials のFreeTrialを申し込む」をご参照ください。

以上

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